◇ あとがき ◇


 長らくのおつきあいありがとうございましたー!
 これにて「わらくる」完結、ダイバーシリーズも終了です。

 5年前、単発読み切りのつもりで「口は禍の」を書いたときには、こんな風にシリーズ化してこんなにたくさん書くことになるなんて想像もしていませんでした。とくにこの最終話「わらくる」は、「蓼食う虫は蓼を食う」を書いた頃からなんとなくのイメージは持っていたものの、多分書くことはないだろうと思っていたお話でした。それが、いろんなきっかけやお声をいただいた方々と、不規則更新にもかかわらず根気よくおつきあいくださった読者様のおかげで最後まで書くことができました。
 本当にありがとうございます。心から感謝しています。

 内幕を申しますと、実は設定の矛盾や間違いや重大な虚偽を多々抱えたシリーズになっております。 登場人物たちの就労形態がありえないとか、海外情勢や航空会社のダイヤ事情が時制に合っていないとか、言い出したらきりのないトホホの中でも最たるものが、ダイビングコンピュータのログ保有年数でした。
 「蓼食う虫は蓼を食う」に、主人公のダイビングコンピュータから10年前の記録データを左之助が無断で取り出す、というシーンがあります。ですが、使用設定のウワテック社アラジンプロは本体の電池寿命が約7年しかありません。電池交換をするとそれ以前のログデータは失われるため、そんなことは逆立ちしたって不可能なのです。この大チョンボに気付いたのは公開直後だったのですが、あんまりにもリカバリーのしようがなく、そのままお手上げ状態で放置しつづけて今日に至っておりますことをお詫びさせていただきたいと思います。

 けれど一方で、海のエピソードはほとんどが実話、または実際にあったとされる話をベースにしています。白浜や串本にマンボウやイルカは出ますし、通るはずのないところでマンタに遭遇することもあれば、生還するはずのない状況から人が生還することもありますし、藻くずにしか見えない魚も、スキンダイバーと遊ぶイルカも実際にいます。手乗りマンタも、場所こそポナペではなくヤップですが、本当です。
 思えばこれだけ書き続けてこられたのには、海のパワーをたくさんもらえたおかげも大きかったと思います。 「わらくる」ではポナペ(ポンペイ)を舞台にしましたが、イメージとしては、それぞれ一度だけ訪れたことのあるポナペとヤップを足して2で割った感じを想定していました。どちらも機会があればぜひ再訪したい、記憶に残る美しい島と海でした。原作の彼らの宿命的な部分を取り払いつつ、でもやっぱり剣心で左之助な左之剣としてなんとか幸せになってもらおうと二人をそういう島に送り込んでみたのがこの「わらくる」だったという風にも言えるのかなと思います。

 ここまでのご笑覧、本当にありがとうございました。
 感謝と感謝と感謝をこめて、内輪なあれこれなどを述懐させていただいた次第です。
 もし何か少しでもご感想などお持ちくださってましたら、ひと声お聞かせいただけるととても励みになります。

 また次の左之剣でお会いできる日までごきげんよう!


2009年6月29日 ようこ拝
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