「生存(いきなが)らへて居ろといふ何故其の口で道連(みちづれ)に、一緒に死ねといつてくれねえ。」 「なるほど言やあそんなもの、さう心が据つたら、くどくは言はねえ。そんなら爰(ここ)で、手前(てめえ)も己(おれ)と一緒に死ね。」 |
黙阿弥 「三人吉三廓初買」 |
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今、思うと、この不幸な恋愛も、僕の不幸な心のためかとも思える。僕は生れつき暗い心を持って生れていた。僕の心は、のびのびした明るさを、ついぞ知らなかったように思える。 |
三島由紀夫「金閣寺」 | |
父親は、吉岡の隣の椅子に腰かけ、コーヒー・カップを口にはこぶ。吉岡も、いっしょにのむ。 仲の好いお友だちなんだなあ、と蕗子は思う。 父親に“家族”のほかに“お友だち”がいるのに、何かなじめない感じを蕗子は持つ。 父親は、カップを唇にあて、かたむけながら、吉岡を見ている。吉岡は、片肘をテーブルについた手にカップを持ち、父親に半ば背をむけるように躯をよじっている。少し背をのけぞらせ、吉岡は、父親によりかかるかっこうになった。父親の指が、吉岡の頬を撫でている。 脚がしびれたので、蕗子は立ちあがり、のびをした。地下に降りる階段の方へ行く。 |
皆川博子 「人それぞれに噴火獣」 |
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ほんとうに人を愛するということは、 その人が一人でいても 生きていけるようにしてあげることだ。 |
三浦綾子 |
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淡いオレンジの髪揺らいで 遠く君が見えた気がして あたり見回すけれど知ってる ここに居るはずも無い事は 胸を切り開いて思い出を眺め ずっと忘れず生きていくほうがいいの? |
中島美嘉「LEGEND」 <桃様より> |