妄想名言帖 〜過去集積〜



2004年11月



「生存(いきなが)らへて居ろといふ何故其の口で道連(みちづれ)に、一緒に死ねといつてくれねえ。」

「なるほど言やあそんなもの、さう心が据つたら、くどくは言はねえ。そんなら爰(ここ)で、手前(てめえ)も己(おれ)と一緒に死ね。」
黙阿弥
「三人吉三廓初買」




今、思うと、この不幸な恋愛も、僕の不幸な心のためかとも思える。僕は生れつき暗い心を持って生れていた。僕の心は、のびのびした明るさを、ついぞ知らなかったように思える。
三島由紀夫「金閣寺」




 父親は、吉岡の隣の椅子に腰かけ、コーヒー・カップを口にはこぶ。吉岡も、いっしょにのむ。
 仲の好いお友だちなんだなあ、と蕗子は思う。
 父親に“家族”のほかに“お友だち”がいるのに、何かなじめない感じを蕗子は持つ。
 父親は、カップを唇にあて、かたむけながら、吉岡を見ている。吉岡は、片肘をテーブルについた手にカップを持ち、父親に半ば背をむけるように躯をよじっている。少し背をのけぞらせ、吉岡は、父親によりかかるかっこうになった。父親の指が、吉岡の頬を撫でている。
 脚がしびれたので、蕗子は立ちあがり、のびをした。地下に降りる階段の方へ行く。
皆川博子
「人それぞれに噴火獣」




ほんとうに人を愛するということは、
その人が一人でいても
生きていけるようにしてあげることだ。
三浦綾子




淡いオレンジの髪揺らいで
遠く君が見えた気がして
あたり見回すけれど知ってる
ここに居るはずも無い事は
胸を切り開いて思い出を眺め
ずっと忘れず生きていくほうがいいの?
中島美嘉「LEGEND」


<桃様より>






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